「富」に関するダイアローグ

対談

M)前回から時間がたってしまったけど、今日は「と」
N)今日のテーマは「富」にしようって宿題出てたよね。だから、少し考えて来た。一般的にお金をイメージする富もあるけれど、体験価値も味方を変えれば富と言えるなあって思った。お互いの生まれ育った和歌山県田辺市南新町の体験は大きな財産だと。
M)そうだね、先日東京の居酒屋さんでケンケンカツオのメニューがあって、カツオの刺身ってことで頼んだの。一緒に行った友人たちは「美味しい。美味しい」って食べてた。僕はこの間田辺で食べたカツオの味と比べてしまったので、普通やなあって。
N)美味しいものを知っていると相対的な評価になってしまうね。僕たちはカツオに関してはソウルフード的に食べて来たから、今日のは新鮮やとか、今日のは今ひとつやとか、目利きじゃないけど、旨さを測るめもりの精度が高いのかもしれないね。
M)最上の味を知っている人は皆、「これはそこまで美味しくない」って言いがちだね。
アメリカにいた頃に時代にアメリカで食べた「タコス」も美味い美味いってみんなで食べてたら、メキシコ人がメキシコのタコスとは全然違うぜ!って憤慨してたなあ。
N)そこまで言われたら、メキシコでタコス食べたくなるね。


食べ物の話で言えば、初めてカラスミを食べたのは、大昔一緒に行った居酒屋で、大根を薄くスライスした上にカラスミを乗っけて食べたのは新鮮な驚きだった。あれからカラスミ食べるようになった。
M)珍味やね。僕は会社員の大阪時代に、鳥の刺身を初めて食べたのが印象に残ってる。
鳥も刺身で食べれるのが驚きだった。当時から随分と時間がたっているけど、冷凍技術のおかけが、いろんなものがスーパーで売られてたり、お店ができてたりするよね。
N)会社新時代に博多の漁業市場で食べて、その美味しさびっくりしたサバの刺身も、今や京都のスーパーで買うことができちゃう
M)冷蔵技術も運送ネットワークも進化しているね。昔はカゴに乗って移動できるのはお殿様とか身分の高い人に限られていた時代を思うと、なんて恵まれた時代に暮らしていることか。
N)冷蔵技術で言えば、これまた田辺の話になるけど、町内に氷屋さんあったね!
M)あった、あった!上田家具の向こう側に。
N)そうそう、子供より大きい氷の塊をガーガーと切っていたのを思い出した。
M)ノコギリで切っていたね。氷屋のおっさん達に理由は覚えてないけど怒られた記憶がある。
N)僕も店先でじーっと作業を見ていたら、危ないからあっち行けって言われたわ(笑)
M)あれはどこに卸してたのかなあ。
N)漁師町でもあるから、漁師さんとか、魚屋さんとか。氷屋さんの記憶も富ですね。
M)当時は田辺に魚屋さんもたくさんあった。
N)町内には松本の魚屋さんがあって、もちガツオ入荷したら近所のみんながこぞって買いに行ってたなあ。
M)朝撮れた新鮮な魚が昼には食べれるっていうのも富。
N)今やほとんどの店がなくなってしまって、昔のようなライフスタイルはお金を出してもできない。


残念だけど、貴重な体験が詰まってた。
M)田辺は名産品も多いけど、マニアックな嗜好で言えばらっきょが美味い。
N)少し痩せた細身のラッキョがたまらなく美味い。あとは金山寺味噌、南高梅。
M)あと絵画。和歌山の画家「〇〇〇〇」の絵が家にあって、親父は100万円くらいの値打ちがあるって言ってたのを見てもらったら、ほとんど買い手がつかず、ついても10万円くらいだった。
N)絵画の資産価値の評価って難しいね。
M)画家は死んだら価値が上がるっていうけれど、本当は生きている間の方が値段がつくんだよ。もちろんピカソやシャガールのようなのは別格だけど。だから、蓄財のために絵を買うのは間違ってる。
N)それは知らなかったなあ。
M)アンリ=ルソーなんかは、下手くそなんだけど味があって価値がある。ユニークなものは評価が高い。
A Iや複製技術が発達しているから、今後の芸術の価値はどうなるのだろう?
N)みんなが欲しいと思うもには価値がつくという基本は変わらないと思うけどね。
くどいようだけど、田辺での体験価値はもはやお金を出しても買えない貴重な財産。
M)プライスレス。いい言葉。
N)毎年7月24日25日は田辺祭り。この2日間は街が別空間になって毎年興奮していた。
M)お稚児さんとして太鼓を叩いたり、笛を吹いたりした経験はプライスレス。そういえば、笛の当番の時に、太鼓を叩くはずの八百屋の息子がぐずって出なくなって、僕が太鼓に回されたの思い出した。
N)トントントテトン、や、おん、はーあ。
M)お稚児さんの時は神の使いだから、特別待遇だったね。
N)太鼓や笛の練習で会所に集まって、練習したあと、たくさんお菓子やおもちゃを貰って嬉しかった。
M)花火なんかも山のように貰った。町内のみんながお金を出し合って、お稚児さんにあげるお土産だから、町内の富が集まってたね。
N)田辺祭りで何が嬉しかったと聞かれてば、お笠の2階に登って「コーライ、コーライ」って田辺の町を回ったこと。お笠を方向転換するときは、ウイリーのように前輪を担いでぐるりと回す。その瞬間、ふわっと体が浮くのが最高。
M)お稚児さんの時もそうだけど、小学校高学年になって提灯持ちをしたのも楽しかったなあ。
N)お稚児さんは幼稚園から小学1年くらいまでやったね。昔は子供が多かったから、2、3回しか出れなかった。
M)大人になってからも、田辺祭りのお囃子を聞くと胸が熱くなる。
N)いいね!来年は、田辺に遊びに行こうかな。祭りも富だね。


M)そう思えば、人を集める力も富だね。
私は、こないだ「人たらし」って言わたんけど、これって褒め言葉と思っていいのかな。
N)とても良い褒め言葉。「多屋さんなら」って言われるのも富だよ。
M)そうなんかなあ。先日、絵本「だがし屋のおっちゃんはおばちゃんなのか?」の3刷決まったんだけど、これも、富の増幅なんかなあ。地味やけど。


N)版権とか著作権とか肖像権とか、富の源泉だからね。俳優でも舞台俳優は公演のチケットの収入で食べているけど、映画やテレビは放映されるごとにお金が入ってくるからね。
M)絵本で言えば「ぐりとぐら」なんかシリーズの累計発行部数は2,187万部以上ですごい富を生み出し続けているよね。アンパンマンは8,100万部以上!アニメ化もされてるし・・・。
N)みっちゃんも同じフィールドにいるのだから、夢があるね。
M)めちゃくちゃ売れるヒット作を出したいんやけどなあ・・・。
N)これから、これから。
M)いつも多くの人に読んでもらえるものを作り続けたいねえ。


【会話の主】 登場人物

多屋 光孫(たや みつひろ)絵本作家・挿絵画家。和歌山県田辺市出身。3歳より田辺市の洋画家、故益山英吾氏の洋画研究所で絵を学ぶ。実家は本屋(南方熊楠ゆかりの多屋孫書店)。2015年8月まで二十ん年、普通に会社員(海外営業・広告宣伝など)をやっていたが脱サラし画家活動を開始。一般社団法人 日本出版美術家連盟理事(事務局長)

濱中 伸幸(はまなか のぶゆき) ブランドクリエイター。和歌山県田辺市出身。実家は紳士服店。
元百貨店婦人服バイヤー。2011年株式会社ハッピーアイ設立。HAPPYEYEブログ、エンカラージオンラインショップ企画運営。ファッション専門学校非常勤講師

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