【会話の主】 登場人物
多屋 光孫(たや みつひろ)絵本作家・挿絵画家。和歌山県田辺市出身。3歳より田辺市の洋画家、故益山英吾氏の洋画研究所で絵を学ぶ。実家は本屋(南方熊楠ゆかりの多屋孫書店)。2015年8月まで二十ん年、普通に会社員(海外営業・広告宣伝など)をやっていたが脱サラし画家活動を開始。一般社団法人 日本出版美術家連盟理事(事務局長)
濱中 伸幸(はまなか のぶゆき) ブランドクリエイター。和歌山県田辺市出身。実家は紳士服店。元百貨店婦人服バイヤー。2011年株式会社ハッピーアイ設立。エンカラージオンラインショップ企画運営。ファッション専門学校非常勤講師。
N) 記念すべき第1回は、「ありのまま」というワードに決まりました。「ありのまま」について、思いつくまま、「ありのまま」に、語り合いましょう^_^
M) 表現者としての葛藤なんだけど、、、
絵本にしても、絵にしても「ありのままの奔放でプリミティブな表現を、共感してもらいたい」と思い制作をしている。
我に帰ると、編集やクライアントの要望を聞きながら「相手の要望にあわせて」チマチマ仕事をしている自分の気持ちがあって、振り子のように揺れ動いている。
もっと違った面を見せたいという思い、もっと人を喜ばせたいという思い、本来の自分の全てを出しきれていないという歯痒さを抱えながら、ありのままの自分を評価して欲しいと望んでいる。
一方、自分の嫌悪するダークサイドは、隠したいという気持ちも同時に存在している。
「ええ格好しい」って言葉があるけれど、どこか自分の全てをさらけ出すことに、ためらいが、、、
平野啓一郎氏の本『私とは何か 「個人」から「分人」へ』– 講談社現代新書-に出てくる「分人」という概念「対人関係ごとにみせる複数の顔」こそが、「ありのまま」の自分なのかもしれない。
ちょっと、かたい話になってしまったね。
N) 僕はこの年になって初めて気づくことがたくさんあるよ。
最近思うことは、小中高大学を振り返ると「良い点数を取ること」「評価してもらえること」以外は無駄と思っていた。
会社に入ってからは、いかに昇進昇給して給与を稼ぐかが全てだった。18年勤めた会社と辞める時、出世することに全振りしていた自分に気づいた。
出世は会社の中の指標であって、今思うとずいぶん狭い世界で生きていたなあと思う。
N) 人は誰しも環境に応じた自分のキャラクターを持って立ち回っているとも言えるね。環境に合わせることができない人が引きこもっているのかも知れない。分人から思ったのは「水」。
水は本来の水の姿、水蒸気、氷と環境によって変化するけれど、本質はH2O ってことやね。
M) 水に関しては「しずくのぼうけん」(マリア・テルリコフスカ・福音館書店)という絵本があるので、読むと面白いかも。私自身も会社員時代、浄水器の仕事に長年携わってきたので「ありのまま」と「水」の関係っていう話にはつい食いついてしまう。
当たり前に、水は生きていく上でなくてはならないものなんやけど。DHMO 一酸化二水素水で検索すると「この物質は摂取しすぎると死ぬ恐れがある危険な物であり、その物質に完全に浸されると呼吸が妨げられる・・・みたいなことがいろいろ書いてあって、もちろんジョークなんやけど。
確かに水は、津波や洪水として災いをもたらすこともあるわけで見方を変えれば凶器やなあと思ってしまった。水は、ありのまま水以外の何者でもないのだが・・・。絵本のネタになりそうやなあ。
M) そういえば、昔「料理の鉄人」とか「どっちの料理ショー」とかありのままの素材の良さを生かしたりして、いかにその素材の魅力を最大限に引き出すかを料理人が競う番組って結構あったなあ。
N) おぼえている!
豪華なセットで制限時間内に料理を作り上げていくさまは、エンターテイメント要素があって、最後の勝ち負けまで、料理を戦うスポーツのように仕上げていたので大好きだった。ありのままの素材の良さを引き出すってことは、料理人の腕次第で素材のありのままが変わってくるってことかな。
M) 子どもの頃、よく食べていた刺身も調理する人の包丁さばきで味が変わるよね。
ただ切断すればいいというような包丁の使い方とは全く違って、細胞の一つ一つまで滑らかに切り、細胞を潰さないらしいね。あと魚の目利きや冷蔵技術や温度管理、刺身包丁の職人や研ぎ師の技術。
ありとあらゆる技術が結集されて、最高の「ありのまま」を引き出していると思う(この職人技を「ありのまま」と言っていいのかわからないけれど)。
どこかの国のシェフが、刺身は切るだけだから料理とはいえないと言ったらしいが、ありのままの最高の状態を引き出せる技術は、最高の状態を知っているからできる超一流の料理人だからできる技術だと思う。
N) スペインで、イエス=キリストの絵の修復でとんでもない絵に書き換えられた事件があったのを思い出した。その修復をしたおばあさんは心の中にある「ありのままの姿」を書いてまったのんかも知れないね。
M) これやね → https://www.afpbb.com/articles/-/2963272アートやなあ。修復した作者のおばあちゃんに著作権収入の49%が入るらしい。
N) 今日お題に選んだ「ありのまま」って言葉も、こういう会話をしてみると良い選択だったね。
M) 最初固かったけど、1回目としては、まあまあ良かったんかなあ。だんだん慣れてくると思うので次回もお楽しみに。
笑っていいとも! みたいに続くといいなあ。兎にも角にも「ん」までは続けられる様に頑張ります。
今日の気づき
「ありのまま」はどこにもない。 あるのは人間の脳内での認識。
しかもそれらの認識が完全一致することはない。
「ありのまま」は人それぞれの無限の視点での解釈や認識の総和かもしれない。
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