多屋光孫 M)今日は「の」
うーん、のんびりいきたいよね…。
濱中伸幸 N)なんか大変そうやね
M)いろんなことをパラレルに進めている状況で毎日大変です(笑)
N)絵本や個展だけじゃなくて、いろんな役も引き受けているからね。
M)のんびりはさておき、呑気ってネガティブワードなのかな?
N)そうね、ポジティブかネガティブかで言ったら、ネガティブなのかもしれない。
でも、人によって、ポジティブ、ネガティブという言葉自体が持っているイメージが違ってきているように思う。
M)ポジティブが良い、ネガティブが悪いイメージだけど…。
N)というのも、学生のコメントで、『もっとポジティブに頑張りましょうという世の中の風潮がしんどい』というのがあった。それを読んで、そういう捉え方をしているのが新鮮だった。ポジティブという言葉を忌み嫌う感情。
M)まあ、そう捉える子もいるやろうね。
N)あと、『ネガティブだからといって、ダメ扱いされるのもどうかと思う』というコメントもあった。
M)それわかる。
N)人間誰しも、ポジティブ状態とネガティブ状態があるから。
M)そういう内容のことで思い出した。
のこ太郎さん知ってるよね。
N)はいはい、一緒に食事したことあるね。
M)のこさんのワークショップで『ミロとまほうのいし』(マーカス・フィスター著、谷川俊太郎 翻訳)の本を23人の子供達に読み聞かせをした結果の内容を聞いたの。
この絵本はハッピーエンドとバッドエンドの2つの結末があるのだけど、バッドエンドの方が子供たちの反響がすごくて盛り上がったらしい。というのは、バッドエンドの後のストーリーを子供たち自身でああでもない、こうでもないって語りあったりしたらしい。
ハッピーエンドを聞いた後は、ふーんそうなんだって感じで終わった。
N)それって興味深い結果だね。
M)絵本は終わり方がハッピーエンドじゃなきゃ売れないって、よく言われるけど、バッドエンドの方こそ、その逆境やネガティブなものを克服しようとする想像力だったりエネルギーだったりが生まれる。
だから、バッドエンドだからといって必ずダメではない。
今までハッピーエンドじゃなきゃ受け入れてもらえないと、一生懸命ハッピーエンドの終わり方を作ろうとしていたけど、バッドエンドもその後の想像力を掻き立てるものがあることに気づいた。
N)大人にとっては、絵本のおしまいはすべてのおしまいとして思考停止してしまいがちだけど、子供にとっては、物語の終わりがすべての終わりではなくて、その続きを想像して楽しむことができる力があるのかもしれない。
「これで終わりじゃないはず」とか「もし終わりだったら、僕だったら第2弾はこんなお話にしたら面白いと思う」なんて、ある意味強い生命力を感じる。
M)子供の想像力って制限がないから。
N)先日の講義で取り上げた固定マインドと成長マインド、人間の能力って自分でブレーキをかけない限り成長するものなんだという内容なんだけど、物語には終わりがあるっている考え方もある意味固定マインドなのかもしれない。
M)そうね。固定マインド、成長マインドの話でいうと、案外バッドエンドの方が成長マインドだよね。バッドエンドが新たなものを生み出すトリガーになるかもしれない。
N)ネガティブ、ポジティブ、ハッピーエンド、バッドエンド、のんびりから派生した用語について対話してきたけど、ハッピーについて話してもいい?
M)ハッピーアイの社長としてハッピーを語るの?
N)そうそう、ハッピーの語源は、偶然に起こる、発生する、運命、出来事という意味の「hap」や「happen」が起源とされている。日本語の幸せの語源の一つである「仕合わせ」も「めぐり合わせ」という意味がある。
M)ハプニング、ハップンから来ている。
N)だから何が言いたいかというと、良い出来事も悪い出来事も、すべてハッピーなことと捉える考えもありなんじゃない。
失敗したり、躓いたり、病気になったり、はたまた離婚したりしてもすべてハッピーと捉える思考も成り立つのでないかって。そこにプラスのイメージを持つかマイナスのイメージを持つのかは、その人のマインド次第。
だから、ハッピーの反対はバッドじゃなくて、アンハッピー。要するに何も起こらないこと。そんな考えに対してみっちゃんはどう思うか聞いてみたくってこの話をしたの。
M)人間万事塞翁が馬。一見ネガティブなことも、その先で起こった出来事をどう捉えるかの視点が大切ってことかな。のんびりから大分遠くまで来てしまったけれど、大丈夫かな?
N)ポジティブでもなくネガティブでもなく、ハッピー、アンハッピーを気にせず「のんびり」するってことが大切ってことで今日は良しじゃないですか。
M)ほんと、のんびりしたいね(笑)
N)ほんと、のんびりしたいみたいですね(笑)
(多屋光孫 個展の案内)
http://mt.voog.com/zhan-shi-hui-qing-bao
【会話の主】 登場人物
多屋 光孫(たや みつひろ)絵本作家・挿絵画家。和歌山県田辺市出身。3歳より田辺市の洋画家、故益山英吾氏の洋画研究所で絵を学ぶ。実家は本屋(南方熊楠ゆかりの多屋孫書店)。2015年8月まで二十ん年、普通に会社員(海外営業・広告宣伝など)をやっていたが脱サラし画家活動を開始。一般社団法人 日本出版美術家連盟理事(事務局長)
濱中 伸幸(はまなか のぶゆき) ブランドクリエイター。和歌山県田辺市出身。実家は紳士服店。
元百貨店婦人服バイヤー。2011年株式会社ハッピーアイ設立。HAPPYEYEブログ、エンカラージオンラインショップ企画運営。
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