多屋光孫 M)今日は「ひ」「悲惨」
濱中伸幸 N)いきなりネガティブワードやね。「秘密」「暇」とか「ひっくり返す」
M)ドラマの最後で全てをひっくり返す、どんでん返しのストーリーは憧れる。モヤモヤがさーっと晴れるようなカタルシス。
N)強いものが弱いものにひっくり返されるとか、意地悪な人が最後に反省するような展開になるとか、そういうのはスッキリするよね。
M)時事ネタになってしまうけどいい?
N)もちろんいいよ!
M)今の世の中ネットでいろんなニュースが毎秒アップされる時代だけど、ウクライナとかイスラエルなんかのニュースを見ていると、なんだか強者が弱者を叩く構図は変わらないのかなって思う。
あとは富む者と貧する者の差も拡大してもはやひっくり返せない状態のようにも感じる。
N)いきなり重いね。国内のニュースでも、一部の富裕層の人数が増えている一方で、労働者の給与所得の平均は下がっているから、ますます格差が広がっているよね。
M)そうね、ひっくり返すというワードだと、どうしても政治に目がいってしまう。単にひっくり返すで言えば。「オセロ」一時期ハマって、ネットで対戦して遊んでた。
ハマるといえば、ギャンブル。人生ひっくり返したいと思っている人がのめり込む。
N)まあ、ギャンブルはお金に余裕のある人が勝つようにできている。
というのも負けても買っても心の余裕があるから、冷静に判断できるように思う。
負けても引き際がわかっている感じ。
お金に余裕の無い人ほど、負けが続くと取り返そうという気が大きくなっって、結果全てつぎ込んで大損してしまう。
M)競馬や競輪、競艇なんか全てそうだけど。万馬券なんかを夢見て、人生ひっくり返そうと思っているのかな。
N)買わないと当たらないからって言いながら、確率の低い馬券に投じたり、人生で大きな事故に遭うより確率の低い高額当選金の宝くじを買ってしまう。
バカにしているわけじゃ無いけど、宝くじは「愚か者に課された税金」であるという言葉もあるくらい。
お金を投じるなら自己投資が一番リターンが大きいと思うなあ。
M)お金があることを想定して、お金持ちはギャンブルで勝つのは嬉しいのかな?
N)いやいや、お金のある人でギャンブル好きな人って、大王製紙の井川意高さんが有名だけど、かなりレアな存在。普通は馬主としてレースに参加したとしても、馬券を買うようなギャンブルはしないと思う。
M)馬主として楽しむのか、、、
N)自分の育てた馬がレースに勝つのは嬉しいと思うし、お金持ちの遊びの域やと思う。そういや北島三郎さんのキタサンブラックっていう馬あったなあ。
M)野球の大魔神佐々木投手なんかもそうだよね。あとは共同馬主なんてのもあるみたいやね。
N)日本で馬主になるには、色々条件があるみたい。年収とか保有資産とか。
まあ、金融投資よりもリスクが高いと言われている。
金融投資の場合は企業業績とかIRの発表なんかで投資の判断材料があるけど、1歳馬がその後早く走れる馬に育つかどうかは未知の要素が多いよね。
M)ギャンブルはかけたその後すぐに結果が出るから、仮にビギナーズラックで1万円が10万円に増えたりしたら、脳がバグってハマってしまうのだろうね。
N)そうそう、その時の興奮をもう1度と思ってめり込む。さっきも言ったけど、自己投資にお金を使うのが一番だと思う。
本を読む映画を見る、いろんな経験体験をするってこともそうだけど、サラリーマンをやめて自ら稼ぐ道を歩むのもある意味自己投資だよね。
そう考えると、絵本をたくさん出版していく中で大ヒット作を世に出すのが一番夢があって良いと思うよ。
M)そうだよね。自分も今までの人生をひっくり返すような作品を世に出したいと思ってやっているよ。
N)みっちゃんの場合は、「ひっくり返したい」の前に、読者を「びっくりさせたい」じゃない?
M)そうね、びっくりさせたいといつも思っている。
N)びっくりする、感動するってワクワクするけど、びっくりさせる側、感動を与える側の方がもっとワクワクするよね。
M)確かに、人にプレゼントするときや、恋人が告白するときなんて、相手のことを色々考えてその瞬間もかなり幸せを感じているだろうしね。
N)最近の子供は、「わっ」って急に人の前に現れてびっくりさせるような遊びってするのかな?
M)絵画教室で教えている子供たちはそんなことやっているシーンを見るよ。
N)ということは、人間の欲求として、子供の頃からびっくりさせたい気持ちがあということ?
M)それはあるよ。落とし穴に落ちるシーンを見て喜んだりね。
N)物語の展開で、予定していた流れと違ったり、犯人と思っていた人が善人だったり、まさかのオチがあったり、それら全て、考えている作者がワクワクしながら考えたことなのだろうね。そういう創作活動って楽しいよね。
M)それはそう。24時間365日というのは大袈裟かもしれないけど、いつも時間があれば、面白いこと、びっくりすること、何かあっと言わせることのアイディアを考えているよ。そんな本を創りたい。本に限らず作品もね。
N)ここでちょっと、最近見た映画の話をしてもいい?
M)何観たの?
N)ジョン・ガリアーノっていうファッションデザイナーのドキュメンタリー。
彼はクリスチャンディオールのクリエイティブデザイナーに就任してから何年も業界が絶賛するコレクションを連発していたんだけど、2011年にパリの夜のカフェで差別発言しているところを一般人に動画に取られ、大問題となってディオールを解雇されるの。その経緯にまつわる映画。
M)ジョン・ガリアーノ?
N)そうそう、この映画の中で、ガリアーノがインタビューに答えるシーン過去を振り返っていくのだけど、その中でいいなと思った言葉があるの。要するにクリエイティブなものを生み出し続けるには、普通の生活をちゃんとした方が良いということ。
M)えっ、普通の生活をした方が良いということ?逆やと思った。
N)ガリアーノ言葉を引用すると、「創造するためには生きる必要がある。経験する必要がある」「創造するために経験や感情思い出を必要としている。そしてもしそのチャンスが与えられないとしたら、何が起こり得るか、私たちは知っている」
最後の一文は仕事に忙殺されてアルコール依存になった結果思いもよらない暴言を吐いてしまった後悔の念からきている。
M)ある意味びっくりさせる事例やね。この映画のキービジュアルも何も知らない人が見てもインパクトのあるスタイリング。
バスキア風の仮面に、胸にお人形さんがついている服。
こういうこの服着てどこいくのって感じで弾けているのをやってみたいね。
N)時間があれば、観てほしいね。
M)こういう自分の知らないものを見せらるれととても刺激になる。
それとともに、まだまだたくさんのアイディアソースがあるってことに気づいたよ。
びっくりさせるには、もっとびっくりしていこうと思ったね。
N)そうですね、貪欲にびっくり体験をしていましょう!
【会話の主】 登場人物
多屋 光孫(たや みつひろ)絵本作家・挿絵画家。和歌山県田辺市出身。3歳より田辺市の洋画家、故益山英吾氏の洋画研究所で絵を学ぶ。実家は本屋(南方熊楠ゆかりの多屋孫書店)。2015年8月まで二十ん年、普通に会社員(海外営業・広告宣伝など)をやっていたが脱サラし画家活動を開始。一般社団法人 日本出版美術家連盟理事(事務局長)
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